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小説と音楽を携えて森を歩く
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2015-06-11 (木) | 編集 |
研修が終わり今日は仕事始めだった。

一郎にとって今日の初仕事は、第二の人生の出発として上々の出来だったと言える。
天気もよく、程よく汗をかいていた。
気持ちの良い1日だったに違いない。

家で待っていた妻は「どうだった?」と聞いてきた。
一郎は職場の雰囲気や先輩たちが親切に教えてくれたことを話すと、
妻は安堵したかのように、「よかったわね、あなた。」と言った。

その夜一郎は久しぶりに焼酎の炭酸割りを3杯も飲んだ。
食卓は色とりどりのご馳走であふれていた。
妻の心づくしのお祝いだったのだ。

一郎は「これ美味な〜」と一言つぶやいた。
寡黙な一郎にとって面と向かって相手を褒めるということができない。
彼には最大限の感謝のつもりなのだが・・・

一郎は酔い覚ましにベランダにでた。
ひんやりとして気持ちの良い夜だと思った。
周りの家の電気はほとんど消えていた。
点いているのは数件で、それも夜の闇に飲み込まれようとしていた。

ふと夜空を見上げると月が何か言いたそうに輝いていた。
その月は何故か懐かしく前にも一度どこかで見たような気がしたのだった。

あと何年生きられるのだろうか、
いや、いつ死んでも良い生き方をせねばなるまい。
一郎は第二の人生に向かって、心の中でそう呟いていた。

どこからともなくあるフレーズが一郎の頭に響いていた。

〜パセリ セージ ローズマリー & タイム〜♪〜

少年は時を忘れて遊んでいた。
気がついた時には友達は一人も残っていなかった。
あたりはすっかり暗くなり、あれ程あった藁ボッチも僅かになっていた。

秋も終わりに近いそんな夜だった。
少年は藁ボッチで作り上げた家の上で寝転がり、夜空に輝く星を見つめていた。
時はゆったりと流れ、
少年にとって大人になる事はずっと遠い未来のことにしか感じられなかった。

夜空に輝く星々たちも、少年の考えに同意しているように瞬いていた。
月も何か少年に語りかけようとしているように見えた。
〜〜〜 〜〜〜 〜〜〜 タイム 〜〜

青年は仕事に追われていた。
働いても働いても終わらないのだ。
残業をしても仕事は終わらず次の日に残してしまう。
そんな毎日だったが青年は一つも今の仕事に不満はなかった。
彼が自分で選んだやりがいのある仕事だからだ。

青年は夢を持っていた。
他人から見れば細やかだろうが、青年にとってはすべてだった。
一戸建ての家を持ち、可愛い奥さんと結婚をし、子供に恵まれる。
給料は並の上でもいい、この仕事を誰よりもできると言われたい。
だから青年はどんな困難にも立ち向かえた。

京浜東北線がやけに早く感じる、帰宅途中に見えた赤羽駅も後ろへ消えていった。
田端駅で山手線に乗り換え、巣鴨駅で降りてマンションへ急いだ。
青年は歩きながら昔を思い出していた。
あの時永遠と思っていた時の流れが、こんなに早く感じられるなんて。

東京の夜は月も見えない。
青年にとって暑苦しさと息苦しさしか感じられなかった。
足取りがこんなに重いなんて初めての事だった。

突然地面がぐにゃりと傾き、青年は足を取られ前のめりに倒れこんで行った。
近くにいた女性が「大丈夫ですか!」と声をかけていた。
青年は遠のく意識の中で、これまでの人生を走馬灯のように見た。
「俺はこのまま死ぬのか・・・」

その時頭の隅に何かが響いてきた。

「アーユーゴーイング・・・♪」

しかし、青年はそれ以上聞く事はなかった。

  まだ君は死んじゃいけないよ・・・

近くにいた女性は手に「パセリ セージ ローズマリー & タイム」を持って病院へ向かっていた。


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